戦闘報告など
Battle Report

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1989年に海軍歴史センターが纏めた報告「Operational Experience of Fast Battleships; World War II, Korea, Vietnam」および、月刊「丸」1993年2月号から1995年5月号に連載した「戦場別/アメリカ高速戦艦ウォー・ヒストリー」より

↑ENTERPRISE GROUP ANTI-AIRCRAFT FORMATION 24 AUGUST 1942. Image courtesy of HyperWar.

↑Image courtesy of Shipbucket.
艦隊防空
1942年8月23日〜25日
ノース・カロライナ(BB-55)
の戦闘報告
東部ソロモン海戦
(日本側呼称第二次ソロモン海戦)
戦艦ノース・カロライナ(BB-55)は、太平洋正面で初めて艦隊防空にあたった高速戦艦であった。同艦は航空母艦サラトガ Saratoga(CV-3)エンタープライズ Enterprise(CV-6)を基幹とする第61任務部隊 Task Force (TF) 61の一艦として編成された。ガナルカナル Guadalcanalを巡る戦闘において、日本海軍の空母部隊はトラック Trukを出撃して南下しており、TF 61はこれに対抗して動いていた。日本空母は攻撃隊を発艦させたが、この攻撃隊は88マイルの距離でレーダーに捕捉され、使用可能な戦闘機は全て発艦させるとともに、TF 61は戦闘速力にあげて、来襲する日本機の測定を開始した
[空母部隊指揮官の口述]
TF 61はいまや速力27ノットで航走しており、時折大転舵を行っていた。警戒網は近接支援態勢となりつつあり、巡洋艦は距離2,000ヤード、駆逐艦はその内側で距離1,800ヤードに位置していたノース・カロライナは針路180度をとり、2,500ヤードに位置していた。同艦は全力運転で27ノットの速力を出し、位置を保っていたのである
日本空母を発艦した攻撃隊がレーダーの死角に入ったため、レーダーの画像から消えた。捜索レーダーがキャッチしていた情報は、砲側のレーダーに伝達されたものと思われていたが、敵味方の機数が多かったために、どの目標を捕捉し追尾しなければならないかという点については、全く不可能であった。したがって急降下爆撃に入ってくる航空機を目視したときに、敵の攻撃が開始されたということを確認するという事になった
ノース・カロライナの艦上では、高度15,000フィートからエンタープライズに向かって急降下爆撃を開始したときであり、駆逐艦エレット Ellet(DD-398)においては“高高度にピカッと光る航空機の機動が認められた”ときであった
双眼鏡を通じて米戦闘機隊の攻撃を浴びている攻撃隊の陣形が認められ、一機が間欠的な煙を吐きつつ、スピンに入っていった
エンタープライズでは一門の20mm機関砲についていた士官が、12,000フィートあたりを降下してくる日本機を視認し、直ちに射撃を開始した。この射撃開始が警報となり、他の高射砲台に照準点を合わせるものとなった。このころ、ノース・カロライナは他の警戒艦とともに、エンタープライズに突入してくる日本機に対して5インチ砲の砲撃を開始した
第一次急降下爆撃は1641ころ終えた。至近弾一発だけであった。その4分位あと、空母に対する急降下爆撃が間断なく続いた
エンタープライズに搭載されていた5インチ砲と、その警戒艦の5インチ砲-ノース・カロライナの6門も含む-対空射撃により、日本機は急降下の引き起こし高度を4,000〜6,000フィートにせざるをえなかった。また、対空砲火の照準点をそらすために大きく機動したり、対空砲弾の爆風のよって、ゆすぶられたりしたために急降下爆撃の照準が狂わされ、爆弾を投下したのは少数機であった。5インチ砲弾の弾幕によって、3機の日本機が直撃弾を浴びて空中分解したり火を発したりした
エンタープライズに対して急降下爆撃を開始した25〜30機の日本機の内、15機は降下角70゚の急降下爆撃を行い、高度1,500フィートのあたりで爆弾を投下
急降下爆撃は多くとも5機編隊で行われ、その間隔は短く、各編隊間の攻撃は平均して7秒間隔であった。したがって、対空砲の砲員は故障修理や弾薬補給、そして命中弾や至近弾によって生じた衝撃からの回復に要する時間はほとんどなかった
この間、戦艦ノース・カロライナは単独で対空戦闘を実施した。日本機の攻撃が開始されたとき、空母エンタープライズは速力を30ノットにあげた。戦艦ノース・カロライナはこの速力についてゆけず、次第に後落し、戦闘が終わったとき、戦艦ノース・カロライナは空母エンタープライズから4,000ヤードも離れてしまっていた。所定の位置より1,500ヤードも後落していたのである
第61任務部隊の各艦から離れ、戦艦ノース・カロライナは、同艦だけで16機の急降下爆撃機や雷撃機の攻撃を撃退した。同艦は単艦で後落してしまったため、高高度水平爆撃の目標にもなったのである
1506--戦艦ノース・カロライナの捜索レーダーは141,000ヤードの距離で、敵味方不明の大編隊を探知した
1601--同艦のレーダーは距離64,000ヤードで3個群の航空機を捕捉した。この編隊は戦闘機による迎撃を回避する運動を行っており1620ごろには急速に接近を開始した
1636--この編隊は30,000ヤード以内に接近していた
このあと、敵味方双方のコンタクトがあったために、レーダーの画像はエコーで一杯となってしまった。敵味方の識別が不可能となったので、砲側のレーダーによる射撃管制は不可能となってしまった
1641--戦艦ノース・カロライナは空母エンタープライズ上空に15機の急降下爆撃機が在空していることを探知した。距離8,000ヤード、高度15,000フィート。その1分後、3門の5インチ砲が砲撃を開始した
2分後、戦艦ノース・カロライナ自身が約10機の急降下爆撃機の攻撃を浴びた。右舷艦首方向よりの攻撃であった。この攻撃を浴びている間、ほかの3門の5インチ砲のダイレクターを使用して、空母エンタープライズを攻撃している急降下爆撃機に砲火を指向した
この急降下爆撃機の攻撃は、太陽の右20゚あたりから開始されたもので、降下角70゚で、着弾の投下高度は低かった。5インチ砲の砲撃が非常に激しかったため、若干機が攻撃方向を変えた
この攻撃に際し、激しい5インチ砲と自動火器の対空射撃を突破したのは、わずか3機にすぎなかったが、戦艦ノース・カロライナに至近弾を浴びせた。3機は15〜20ヤードの地点、1機が75ヤードの地点に至近弾を与えたのだった
この攻撃が行われていた間に、急降下爆撃機とよく連係をとって低空を飛ぶ航空機が左舷に出現し、50フィートから5,000フィートまでの間の高度で違った方向に飛んでおり、その内の何機かは6,000ヤードから10,000ヤードの間を機動していた若干機が雷撃に入らんとする行動を見せたので、これを撃墜
また、ほかの数機は、日本海軍の雷撃機がよく行うように、高度6,000フィートから緩降下に入り、高度50〜200フィート、距離2,000〜4,000ヤードで水平になるというものであった
これらの行動は、急降下爆撃機と連係した雷撃機の機動なのか、あるいは戦艦ノース・カロライナの注意をひきつけ、急降下爆撃機の攻撃を容易にする目的があったのかは不明である
このとき、戦艦ノース・カロライナは搭載された、全ての対空火器を発射していた。戦艦ノース・カロライナに搭載された対空火器は5インチ38口径20門、1.1インチ4連装高射機関砲4基(16門)、20mm高射機関砲40門、12.7mm高射機銃26挺だった
(注)1.1インチ4連装高射機関砲は、第二次大戦前に開発されたものであるが、威力が不足していることが立証されたため、次第に40mm高射機関砲にとって代わられた
1645--この広い防御砲火のまっただ中に第二次急降下爆撃が、戦艦ノース・カロライナを目標に6機で実施された。突入方向は左舷からであった。熾烈な対空射撃が浴びせられた
この急降下爆撃機の内、2機が20mm高射機関砲によって撃墜された。4発の爆弾が戦艦ノース・カロライナから150ヤードの付近に弾着し、爆風によって機銃員を打ち倒した。この攻撃は駆逐艦ベンハム Benham(DD-397)から観測され、“4機の急降下爆撃機が戦艦ノース・カロライナに突入したが、撃墜された”と報告されている
また、急降下爆撃と連係して、8機ないし12機の爆撃機が高度15,000フィートから戦艦ノース・カロライナ上空を航過して、同艦と空母エンタープライズの中間に大型爆弾を投下した
この爆撃は、一部しか観測されなかったが、これは一つには、水平爆撃隊が断雲を利して接近できたことと、もう一つには、戦艦ノース・カロライナは低空に舞い降りてくる急降下爆撃機に対処していたことによる
戦艦ノース・カロライナに対する水平爆撃と急降下爆撃の協同行動で、第61任務部隊に対する攻撃は終わった。この協同行動が終わって5〜7分ぐらいは、低空を避退してゆく急降下爆撃機に対する射撃が行われたが、この内、少なくとも1機の友軍機に対して射撃が指向されたことには間違いない。というのは、友軍機から戦艦ノース・カロライナの対空射撃を受け、命中弾があったという報告がもたらされたからである
日本海軍の急降下爆撃機(および雷撃機)の大部分を撃退できた。戦艦ノース・カロライナに搭載されていた5インチ砲の対空射撃は、非常に稠密であるとともに正確であり、その対空砲火の弾幕をかいくぐって突撃することは、ほとんど不可能と思われる。戦艦ノース・カロライナに指向された急降下爆撃機の攻撃に対して、同艦の対空砲火に捕捉されなかったのはわずか3機であった
任務部隊の擁する対空砲火は卓越したもので、空母エンタープライズの報告によれば、とくに20mm高射機関砲と1.1インチ高射機関砲の性能は満足すべきものであったとされている
“次々と現れる目標に対して、すさまじい集中砲火が浴びせられた。任務部隊の各艦が射ち上げる防御砲火と、高速で大転舵をくり返したことが命中弾の少なかった理由であった”
戦艦ノース・カロライナの対空砲火は熾烈をきわめ、ほかの艦から見たとき、あたかも全艦が火をふいているかのごときありさまであった、とされている


Update 23/09/04