戦闘報告など
Battle Report

アイコン 意味
戦闘や事故で失った場合(沈没、墜落)や損傷した場合、艦船などの内部で事故や事件がおこった場合の意味です。自軍や同盟軍、所属機関、所有会社が行った沈没処分や破壊処分、漁礁としてまたは演習で使用して沈めた場合にはこのアイコンは付けません
戦果や功績、各機関に寄贈された場合の意味です。戦争などで沈没し、何十年後に発見された場合もこのアイコンです
映画やTVドラマ、ドキュメンタリーに使用された場合の意味です
参考文献、小説や書籍に登場する事柄です
インターネットやTVゲームに登場する事柄です
UFOなど超常現象に遭遇した事柄です
1989年に海軍歴史センターが纏めた報告「Operational Experience of Fast Battleships; World War II, Korea, Vietnam」および、月刊「丸」1993年2月号から1995年5月号に連載した「戦場別/アメリカ高速戦艦ウォー・ヒストリー」より

↑BATTLE OF SURIGAO STRAIT MAJOR GUNFIRE PHASE, 0351-0409 FIRE DISTRIBUTION OF OPENING SALVOS. Image courtesy of HyperWar.

↑Image courtesy of Shipbucket.
水上戦闘
1944年10月25日
海軍大学校編
「レイテ沖海戦
-戦略面と戦術面における分析・第5巻」
戦艦部隊の指揮官 Commander, Battle Line(G. L. ワイラー少将 Rear Admiral George L. Weyler)は敵との距離との距離が縮まっているのを認めた。従って彼は、彼我の距離26,000ヤードとなった時に砲火を開く様指示した。その理由は次の通り
この距離は第77.2任務群 TG 77.2(J. S. オルデンドルフ少将 Rear Admiral Jesse B. Oldendorf)の作戦計画とは異なる。その作戦計画では17,000ヤードから20,000ヤードで砲火を開くこととされていた
第77.2任務群司令官(CTG 77.2)は弾薬不足を感じており、とりわけ徹甲弾が不足していたため、有効弾を得る必要から射距離を縮小させようとしていた
戦艦部隊指揮官はこの事実を充分に認識すべきであり、砲撃計画を突然変更した理由を論議するのは適切であると思われる
戦艦部隊の指揮官はのちに、その理由を次のように説明している
彼我の距離が20,000ヤードまで縮まるのを待っていたならば、徹甲弾を使用した長射程の利点を失うことになっていたであろう
第77.2任務群が選択した射距離では、有効な砲撃(17,000ヤード〜20,000ヤード)に限界が生ずる
この後者の考え方がどのように生じたのか不明である。というのは、第77.2任務群司令官の考え方における重要な考慮は、初動において徹甲弾の砲撃を行って命中弾を得ることにあったからである。全ての要因を基礎とすれば、命中率に最大の重点が置かれていた。第77.2任務群司令官が発した命令は“比較的広い散布界と、使用しうる徹甲弾の弾数に基づいて長距離砲戦は好ましくない”とされていたのである。すなわち、第3艦隊 Third Fleetは予期される日本艦隊の脅威を阻止し、全ての先制射撃は第77.2任務群と第77.3任務群が行うこととなっており、使用する徹甲弾は搭載弾数の20パーセントに設定された。そして、残りは通常弾による砲撃とされたのである。このような考慮に基づき、戦艦部隊は26,000ヤードで砲撃を開始したものと思われる
0338--戦艦部隊は敵との距離が、次第に縮まってきたことを認めた。数分以内に砲撃開始を計画した指揮官は、行動の自由を確保するため、先頭と後方に配置した駆逐艦を戦艦部隊の前方と後方で単縦陣をとるよう配置した。駆逐艦司令 COMDESDIV XRAYに対し、最短距離で4,000ヤードの距離をとるよう命じた。戦艦部隊が予定されていた26,000ヤードの地点に近づき、司令官は砲撃開始の準備を行っていた。この時、戦艦部隊が追尾していた目標は、戦艦山城であった。色々な理由により、スリガオ海峡 Surigao Straitに所在した戦艦山城とその護衛艦は、砲火を開くことなく26,000ヤードの線を通過した
0351--第77.2任務群司令官は、敵が接近しつつあるのを注意深く見つめており、距離16,500ヤードとなった時、第77.2任務群の側翼に配置してあった巡洋艦部隊に対して“砲撃始め”を令した
0353--左翼の巡洋艦部隊が砲撃を行っている間、戦艦ウェスト・ヴァージニア West Virginia(BB-48)の艦長より同艦が砲撃を開始せんとしている旨の通報があり、戦艦部隊指揮官はウェスト・ヴァージニアが砲撃を開始したことを確認した。
0355--戦艦カリフォルニア California(BB-44)テネシー Tennessee(BB-43)が砲撃を開始
0406--戦艦部隊指揮官は戦艦カリフォルニアが回答信号を見落とした旨を無線電話で通報し、他艦はカリフォルニアの航路に注意を払うよう命ぜられた。この命令は重大な関心が寄せられたが、全く予期しないことではなかった。というのは、戦艦部隊は、単縦陣の陣形運動の演習をする機会が少なかったからである。第77.2任務群司令官は、この過ちが戦艦部隊の戦闘にさほどの危険をもたらすものではないと考えていた。すなわち、戦艦部隊は間もなく砲撃を中止したからである。ウェスト・ヴァージニア、メリーランドMaryland(BB-46)、カリフォルニア、テネシーは砲撃を中止し、ペンシルヴェニア Pennsylvania(BB-38)ミシシッピ Mississippi(BB-41)は砲門を開いてなかった。第77.2任務群司令官は砲火指向について何らかの指示を出していなかったことは特記すべきであろう。教範によれば砲火指向は通常、任務群司令官が命ずることになっているにも関わらず、オルデンドルフ少将は集中砲火に非常に慣れていたのであった。スリガオ海峡の特殊な状況下にあっては、任務群司令官の特別命令なしに戦隊司令官、および各艦の艦長に砲火指向を任せたのであった。各艦の艦長は視程が低く、戦闘が混乱状態に陥ることに鑑みて、上級指揮官からの命令は実行不可能にあったため、目標選定それぞれのイニシアチヴ initiativeに任せるべきであったとしている。ウェスト・ヴァージニアは22,800ヤードの距離から、敵の先頭を切る大型艦に対して砲撃を開始。戦艦部隊は雷撃を回避する蛇効速度を持つため、速力15ノットで運動していた
0354--戦艦部隊指揮官は針路120度をとるため30゚の一斉回頭を命じた
0355--戦艦カリフォルニアは戦艦山城に対して20,400ヤードで砲撃を開始。1分後、テネシーが20,500ヤードの距離から山城に対して砲火を開いた
0359--戦艦メリーランドが19,800ヤードで砲撃を開始
0401--オルデンドルフ少将は150゚を示唆した。このころ、戦艦カリフォルニアとウェスト・ヴァージニアは徹甲弾を節約するため砲撃を一時中断した。戦艦部隊指揮官の回頭命令は無線電話で伝達された。テネシーが回頭した際、カリフォルニアは転舵しなかった。カリフォルニアは転舵命令を15゚と聞いていたのである。同艦は135゚の転舵を行い砲撃を再開。テネシーの砲撃はカリフォルニアの運動で妨げられ、衝突を回避するため後進せねばならなかった。カリフォルニアは0405、砲撃を中断。戦艦部隊指揮官は無線電話でカリフォルニアを避けるよう命じ、この命令によって同艦は操艦ミスに気付いて、270゚の回頭を行った。この転舵の遅れのためにカリフォルニアは、戦列の南に位置することになった。メリーランドは回頭中、砲撃を中止していたため、この時には砲撃中の戦艦はなかった。0408少し前、テネシーは目視線が明瞭であったために最後の斉射を行った
0409--戦艦部隊指揮官は“砲撃止め”を命じた。戦艦カリフォルニアとメリーランドは砲撃を装填していたので、敵の方向に向かって射撃する許可を求め、カリフォルニアは1発、メリーランドは8発発射した
0412--戦艦部隊旗艦の戦艦ミシシッピは19,700ヤードの距離で戦艦山城に対して12門の主砲斉射を実施。ウェスト・ヴァージニア、テネシー、カリフォルニアはMk. 8型射撃指揮レーダーで距離、方位を測定して砲撃を開始したが、これはほぼ正確であった。しかしながら、メリーランドの測定は不正確であった。これは虚像に対して砲撃を開始したものによると見られ、同艦に装備されたMk. 3型射撃指揮レーダーに問題があったと思われる。即ち、メリーランドはウェスト・ヴァージニアの弾着地点を測距し、その水柱を目標としたのではなかろうか。ミシシッピの測定は正確であったが、砲撃開始が遅れた。これは同艦の目標識別に問題があり、その解析に時間を要したものであった。最後にペンシルヴェニアの砲撃開始の遅延も同様に、目標識別とその解析の誤りであった。ミシシッピおよびペンシルヴェニアの問題点はMk. 3型射撃指揮レーダーとその操作員に帰せられる
水上戦闘
1944年10月25日
ウェスト・ヴァージニア(BB-48)
の戦闘報告

↑扶桑型戦艦山城(1944年時)
戦艦ウェスト・ヴァージニア West Virginiaの広範囲にわたる改装と兵器・装備品の近代化(射撃指揮装置、レーダーの搭載など)は、1944年7月15日に完了した。装備の全般的な効率と乗員の訓練状況は、公試における砲撃訓練で第1斉射が目標を夾叉したことで示された。13斉射が行われ、全て目標を夾叉した。一般的に良好な成績を残した示した装備品の内、前部に搭載されたMk. 8 Mod. 2レーダーと、1番砲塔と3番砲塔の揚弾機が故障。1番砲塔の右砲は3斉射をミスし、3番砲塔の右砲が7斉射をミスした
砲撃はレーダーの管制下で行われ、全ての弾着はレーダーで捕捉された。砲塔は全自動となり、これは高速戦艦(戦艦ノース・カロライナ級サウス・ダコタ級アイオワ級)と同じ装備となった。射距離は22,400ヤードで開始され平均射距離は20,880ヤードであった
Mk. 8型レーダー・スコープには弾着の偏差は認められなかった。Mk. 8 Mod. 2レーダーの測角にあって、周知のこととなっていた偏差のために第7斉射、第9斉射、第11斉射、第13斉射に偏差が生じたが、射距離の分布は平均して300ヤードであった。13斉射の射撃間隔は41秒
戦艦部隊指揮官からあらかじめ伝達された指示は、通常弾の目標は巡洋艦、航空母艦、そのた装甲を施していない艦艇に使用し、徹甲弾は戦艦および装甲を施した艦艇に使用すべしというものであった。この2種類の弾薬を使用するにあたり、2発の通常弾は両側に置き、揺架と装填架の中間は空けておいた。揚弾機も砲弾を載せていなかった。徹甲弾と通常弾は、いずれも使用できるように弾庫で調整されていた
本艦の砲撃は非常に効果的であった。全斉射にあって命中弾および至近弾を得た。明瞭な命中弾から発する火炎で目標(戦艦山城)が認められた。この火炎は第1斉射、第2斉射、第6斉射の際に認められたものである。第4斉射は特に目標に集中したものと思われる
Mk. 8型レーダーの操作員は目標の識別と、斉射の弾着確認に困難は感じられなかったと報告している。他艦の砲撃による水柱が観測されたが、第5斉射を除いては全く妨げとならなかった。本艦と他艦の斉射の間に個々の水柱を識別することが可能であったのである


Update 23/08/25